導入事例
東北から建設業界DXを牽引。――書類業務で年間8,000時間削減のインパクトを生み出した仙建工業の現場デジタル改革
仙建工業株式会社様
- グリーンサイト
- cacicar for 建設
- CCUSデータ連携サービス
- ペーパーレス
- 業務効率化
- CCUSデータ連携
- 情報の一元管理
- 元請会社

仙建工業株式会社
- 業界:総合建設業
- 従業員:501名~1000名
仙建工業株式会社(以下、仙建工業)は、鉄道関連工事や建築工事を手がける東北地方を代表する総合建設会社です。先進技術も積極的に取り入れながら安全性の向上と業務効率化を目指し、デジタル化を推進しています。
今回は、同社の執行役員 総合管理本部 業務サポート部長の小西俊之様と、総合管理本部 業務サポート部担当部長の小谷部 英明様に、建設サイト・シリーズ導入の経緯や効果についてお話を伺いました。
お話を伺った方:
執行役員 総合管理本部 業務サポート部長 小西 俊之様、総合管理本部 業務サポート部担当部長 小谷部 英明様
(取材時期:2025年4月、上記および本文中の役職は取材当時のものとなります)
膨大な紙の書類確認作業と非効率な運用が課題に
MCD3:建設サイト・シリーズ導入前の安全書類の作成、管理方法について教えてください。
小谷部様(以下、小谷部):振り返ると導入前はとても手間のかかる方法でした。弊社独自のExcelファイルを作り、作業員名簿や施工体系図等の様式をメールで1次協力会社に送付します。その協力会社には自社の内容を入力後、該当するものを印刷して添付書類とともに提出してもらっていました。2次以降の協力会社がいる場合は、1次協力会社がその分を取りまとめて弊社に提出していました。
小西様(以下、小西):弊社が手掛けた代表的なプロジェクトにJR東日本の仙台支社ビル※があります。これぐらいの大規模現場ともなると協力会社の数も非常に多く、全体で100社を超えます。書類のファイルだけでもキャビネットがいっぱいになるほどの膨大な量となり、その管理がかなり負担になっていました。
※建物名称は2019年当時のもので、現在は東北本部ビル。以降は当時名称のままで記載。
MCD3:具体的にどのような課題感をお持ちだったのでしょうか?
小谷部:まず、書類の提出確認だけでも相当な時間がかかっていました。そこに正しい情報が反映されているかなど、書面の正確性を確認する作業にはさらに長い時間が必要でした。また、施工期間が長期にわたる現場では、工期中に資格や免許の更新、車検の期日を迎えることもあり、期限切れの把握と書類の入れ替えにも苦労していました。元請会社の弊社はExcelで管理できていましたが、協力会社は紙での提出が必要でしたから、不備があれば手戻りが発生するなど、非効率な面がありました。

協力会社の高い加入率と信頼性が導入の後押しに
MCD3:建設サイト・シリーズを知ったきっかけを教えてください。
小谷部:先ほど小西が申し上げた2019年に始まったJR東日本仙台支社ビルの建て替えプロジェクトがきっかけでした。4次まで協力会社がおり、労務安全書類の管理が非常に煩雑になることが予想されていました。
MCD3:導入を決定した決め手は何でしたか?
小谷部:最大の決め手は、1次協力会社のグリーンサイト加入率の高さでした。2019年の工事の際、事前に協力会社に対しアンケートを実施したところ、参加する1次協力会社の85%がすでに加入していたのです。また、20年もの間、グリーンサイトが建設業界で活用されている信頼できるシステムであることも評価しました。
協力会社の利便性を考慮し、自社開発ではなく既存のクラウドサービスを利用することは決定していたので、建設業界で最も使われているサービスを使うことが最善だと考えました。その点、グリーンサイトは業界内で多くの企業が利用しており、協力会社の育成の手間やコストも省けると判断しました。
小西:2018年より、弊社でも働き方改革が本格的にスタートしました。働き方改革を推進するにあたり協力会社との連携強化を重要な柱の1つと位置づけ、より一層、正確かつ迅速な情報共有の必要性を強く認識していました。ちょうど、業界全体で社会保険未加入の企業に対する対策の重要性が高まる中、弊社としても協力会社の社会保険加入状況を適切に把握して速やかに改善させることが喫緊の課題となっていたのです。
小谷部:当時は建設技能者の処遇改善を目的に建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入が始まった時期でもあります。CCUSの導入には弊社もかなりのエネルギーが必要となるので、グリーンサイトの自動連携機能※を活用してCCUS管理の時間を最小限にするということもグリーンサイト導入理由のひとつでした。
協力会社には「CCUSは技能者の処遇改善のために必要な施策ですから、早めに入って早く就労実績を蓄積しましょう」と説明しても、なかなかCCUS加入に応じてもらえない時期が続きました。
2021年9月に、社長から「やってもやらなくてもいいような中途半端はよくない。本気で100パーセントを目指さなくていいのか!」と檄を飛ばされ、「それならCCUSへの加入とカードのタッチを条件に、すべての工事の建設業退職金共済制度(建退共)の掛金を弊社負担にできないか検討しよう」とCCUS推進対策の提案があったことで加入拡大に弾みがつき、今では主要な一次協力会社は100%グリーンサイトとCCUSの両方に加入しています。
※「CCUSデータ連携サービス」のことで、グリーンサイトに蓄積したデータをCCUSへ自動で連携することが可能になる。このサービスの利用にはオプションの「プライムサービス」への加入が必要。
書類業務の削減効果は少なく見積もっても年間8,000時間。
安全管理の強固な基盤構築にも貢献
MCD3:導入後、どのような効果がありましたか?
小西:働き方改革は小谷部が中心となって取り組み、各支店で進めていた業務を本部一括で担うようになりました。全社員にiPadやノートパソコンを貸与して、現場・オフィス間の情報共有や業務効率化を推進し、グリーンサイトもその一環で導入しました。電子化したことで法令遵守を徹底できる基盤を作ることができたと思っています。
小谷部:概算ですが、安全書類の作成や確認にかかる時間が1現場あたり年間90時間削減できそうだと試算しました。弊社で稼働している現場は年平均して130。少なく見積もっても年間8,000時間を超える業務時間の削減が見込めます。特に、作業員の追加や退職の確認作業が少なくなったことで、現場の負担が軽減されています。また、グリーンサイトを活用することで以下の3つの効果を実感しています。
- 協力会社からの安全管理書類の提出が容易になり、元請会社と協力会社双方の管理業務の負担が軽減できた。
- CCUSへのデータ連携が容易にでき、運用業務の効率化につながった。建退共のポイントを割り当てるための就労日数の正確な把握には欠かせないツールになっている。
- 「cacicar for 建設」を使ってプロジェクトを横断してCCUSのタッチ数のデータを効率良く得られるようになった。以前はデータを収集するのに半月以上の工数がかかっていたが、cacicar for 建設ではCCUSへのデータ連携の翌日にデータを取得できるようになったため、データ収集の大幅な効率化へつながった。
さらには2022年4月からすべての新規工事を電子申請に切り替え、協力会社を含めて事務効率を大幅に向上させることができました。電子申請とは言え、協力会社とはファイルをやり取りするシステムです。このときグリーンサイト側で共有フォルダに格納できるファイル名の文字数を50文字から80文字に拡大してもらったことで、協力会社から建退共就労実績ファイルをスムーズに受け取れるようになりました。システム面での柔軟な対応にも非常に助けられています。
グリーンサイトを核に協力会社と連携強化しながら、
東北の建設業界DXを推進
MCD3:今後建設サイト・シリーズをどのように活用していきたいですか。
小谷部:労務安全書類をはじめ、現場施工に必要な書類を管理するプラットフォームとして、さらに活用していきたいと考えています。
また、グリーンサイトを通じて法令遵守と現場管理の改善を図るため、システムを使うだけでは理解が難しい労務安全管理の体系に沿ったマニュアル提供や勉強会の開催を期待しています。
さらに、現場施工管理サービス「ワークサイト」も2025年度から建築本部にて導入を開始しているので、全体で現場業務のDXをさらに推し進めていきたいと考えています。
MCD3:最後に、建設業界のDXについてどのようにお考えですか?
小西:私たちは、東北地方で3番目にCI-NET※を導入しました。正直なところ、首都圏に比べて東北には最先端のDXツールがなかなか浸透しにくい現状があります。ですが、だからこそ新しいツールを積極的に使って、業界全体を前に進めていくことが大事だと考えています。新しい仕組みには、最初とっつきにくさや不安もあると思います。しかし、私たちが先頭に立って導入することで、周囲の企業や協力会社の皆さんも巻き込みながら、業界の標準や基準づくりにも貢献し、実際に使って得たノウハウも積極的に共有しながら、東北の建設業界全体のDXを推進していきたいと考えています。
※CI-NET(Construction Industry NETwork):建設業界のEDI標準(EDI:Electronic Data Interchangeの略「電子データ交換」)に基づく、建設業界の電子商取引に関する標準的なルールのこと。導入することで、生産性の向上やコスト削減などが期待されている。https://ci-net.kensetsu-kikin.or.jp/hajimete/

小谷部:建設業界全体のDXは着実に進んでいますが、特に地方や中小企業においてはまだ課題 が残っています。グリーンサイトのような元請会社と協力会社間のプラットフォームとして使えるシステムが普及することで、業界全体の効率化と安全性の向上につながると考えています。今後も、協力会社との連携を強化しながら、デジタル化を推進していきたいと思います。
企業情報
社名 | 仙建工業株式会社 |
URL | https://www.senkenkogyo.com/ |
事業内容 | 総合建設業(鉄道関連工事、建築工事、土木工事など) |
所在地 | 宮城県仙台市青葉区一番町2-2-13 仙建ビル10F |
創業 | 1942年8月18日 |
資本金 | 2億5千万円(2025年3月末現在) |